こうあってほしいな病院

認知症は病気だ・・・と私は思う。
うちの父と母の場合の症状の出方は、老衰で認知の機能全体が低下してきたような方々とは明らかに違っているからです。
父が以前お世話になっていた認知症特化の老健や、母が今かかっている認知症専門の病院には、似たような方が数多くいらっしゃいました。
「脳のどこかに病的な異変があって、その部分の機能が落ちている」けれど、他はぴんぴん元気。
この区別をわかっていない人が、医療でも介護でも行政でも、あまりにも多いんじゃないかと思います。

母が今いるグループホームでも、私から見て「病的な認知症」と思われるのは母ひとりだけ。
他の皆様は老衰による認知機能の低下だと思います。
ある職員さんに言われました。
「〇〇さんのようなタイプは、実は初めてなんです。これが認知症なんですよね。勉強になります!」

それはさておき・・・
昨日、そのグループホームから急に電話がありました。母が具合を悪くしているようです。
「病院はどこに連れて行ったらいいでしょう?」
というので、実家にいたところだったからすぐ行ってみました。

父が亡くなってから1年間、以前かかりつけだった近くの某クリニックには行っていません。
先生もいい方で親切でよかったんだっけれど、父の最期にはどうしても納得できなかったので、もう行きたくはなかったのです。
母の認知症は、近隣の大都市のコウノメソッドの先生に見ていただいて、快調を保ってきましたが、急病で近くの病院にとなったときにはどうしようかなぁ?とずっと気にかかってはいました。
やっぱり来たよね。こんな時が・・・

いろいろ考えて、近隣の総合病院の系列クリニックに連れて行きました・・・が、このクリニック、入口が幹線道路に面していて、駐車場は屋上です。
屋上からは階段しかないから、そこから母を下の受付まで連れて行くなんて無理。入り口前の道路に停めて、母を下してから駐車場に車を停める・・・という方法にチャレンジしましたが、とても無理でした。雨も降ってたしね~

仕方ないのであきらめて、ちょっと遠い別の病院へ連れて行きました。そこにはいちおう車寄せエリアがあったはず。
でも行ってみたら、入り口前にはほかの車や介護タクシーが停まっていて、停車する場所がありません。しばらく待ってやっとのことで停車できたら、もう疲れてきた母はがんとして車から降りてくれません・・・
そこをなんとかかんとか説得し、やっとのことで下りてもらったけれど、もう自分で歩く気力もなくて転んでしまいそうです。
「車いす~!」と思ったけれど、玄関の中の車いすは3メートルくらい先、母からは手が離せない・・・
通りがかりの人に
「す・い・ま・せ~ん、そこの車いす、ちょっととってもらえませんか~?」
とお願いして、やっとのことで車いすに乗せました。

中に入るともう午後も遅いせいか人はほとんどいなくて「あ、これならすぐかな?」と思いましたが、これが甘かった。
ここから約2時間かかりました。

総合受付から内科に行くと、問診票を書いて血圧計で血圧を測ってくるように言われました。
当然ですが、そんなの無理。
身長と体重を測るって言われたけれど、やっぱり無理。
どうして普段かかっている病院に行けないんですか?って言われたけれど、認知症の専門医で予約制、しかも遠いんですって説明したけれど、あまり納得してはいただけてない感じでした。

それから延々と待って待って、やっと診察になりました。
人気のない病院の廊下で待っている間、もうなんだか悲しくなってきました。
病院って、具合が悪いからくるところですよね。
具合の悪い人間が、寒い廊下の硬い長椅子に放置のままで何時間も待たされるなんて、これが文化国家の病院かしらん?
ぐったりしている90歳近い母をやっとのことでここまで連れてきたけれど、いつになったら診てもらえるのかわからないまま、なすすべもなく待つだけしかできないなんて・・・
でも、通りかかる看護師さんが暖かい言葉をかけてくれるのが救いでした。
「待たせてごめんなさいね」「もう少しですからね」「疲れるでょう」
お医者様もいい感じの先生で、いろいろ診てくれてきちんと説明してくれたのでほっとしました。
特に目立った所見もみられないので、まぁおそらくちょっとした風邪ではないかということで、薬を数日分処方されて終わりました。

さて、やっと診察を終えて会計も終わったところで、母の疲労もピークだったようでした。
帰りましょうという頃には意識もうろう、普段の5倍くらい意味不明になっていました。
車に乗せようと思っても、車いすから立ってくれないし支えようとすれば「痛~い、何するの~!」と大騒ぎです。
途方にくれました。
自力で立ってくれない母をやっと抱えて車に座らせようとしたけれど、なかなかうまくいきません。
困っていたら、通りがかりの人が手を貸してくれて、やっとのことで乗せました。

思いかえせば、父を病院に連れて行ったときも、大変なことはいろいろとありました。
でも、何が大変かと言えば、それは病院という施設が心身の不自由な人に対応した施設ではないということです。
病気で、具合が悪くて、不自由だから来る場所なのだから、そういう人が不自由なく安心できる場所であったらいいのに。
病院というものがあまねくそんな場所であるようになってこそ、「先進国です」って胸をはって言えるんじゃないのかな?